濁流

気が向いたときにマジックのレビューします

Emerald by RALL レビュー

ついに!!!ついに出ました!!!!RALLさんの作品集!!!!!!!!!!!!!

数年前からRALLさんに会うたびに、「作品集を出さないんですか?」「いやー出したいですねー」みたいなやり取りをしていたのですがついにです!!!やったー!!!

 

実はRALLさんの初めての作品集というわけではなく、2016年にJONIOさんと一緒にJONALという作品集を限定で出しています。今回のEmeraldと、Magicians of Asiaのダウンロード商品「Between cards」でJONALのRALLさんパートの内容も大体カバーはできます。よく仲の良いコインマンに、JONALを持っていることを自慢していたのですが自慢できなくなると思うとすこし寂しいです。

 前回の記事の千歳さんに続きRALLさんともかなり仲良くさせてもらっているので正直身内がべた褒めしているだけのレビューになりそうなのですが、長年待ち望んでいただけにうれしくてつい書いてしまいました。では行きましょう。

 

sympathetic coins

JONALではギミックを使っていましたが今作ではレギュラーで。レギュラーになった分、難しくなったとか、クリーンさが減ったとかは全然なく、ほぼ上位互換といっても差し支えないです。特にラストは、「やられた、、、すてき!」となります。

昔RALLさんと通話していた時、「これレギュラーでやりたいんですよねー」とかいっていじっているのを見ていて、その時は「うーんどうしても効果落ちそうだなあ」とか思っていました。しかしきれいにまとめられていて悔しい。事前に何回か見せてもらっていて裏側大体知っていたのに、動画できれいに騙されました。1つ1つの動きに理由付けがしっかりされており、シークレットムーブが目立たないからだと思います。現象だけでも十分すごいのに、細かいところまで詰められている傑作です。この作品を知るためだけに買ってもお釣りが来ます。

 

slip through coin 2

これも割と思い出深くて、初期のslip through coinコインは、RALLさんとtmtmさんの家に遊びに向かう飛行機の中で見せてもらいました。当時のやつはどう見ても不思議ではなかったです。知恵の輪もどき?みたいな印象を受けたのを覚えています。しかし次に会ったときは異様に不思議になっていました。その後、単発現象から手順になっていて、あれがこんなに不思議になるなんてと衝撃を受けました。コインにしては他になかなか見ない現象のためほかのコインマジックと被りがなく手順にも入れやすいと思います。

ちなみに、slip through coinの1の方は、私や、他の仲間と出したアンソロジー「つぶやきぷろだくしょん(http://majion.shop-pro.jp/?pid=135276868)」やMagicians of Asiaのダウンロード商品「Slip Through Coins(https://www.vanishingincmagic.com/magic-downloads/coin-magic-downloads/slip-through-coin/)」で見ることができます。こちらもおすすめです(ステマ)。

 

coin through coin

小ネタ。インスタで一時流行っていましたね。見た目が面白くやっていて楽しいです。公開されている演技動画見ればやり方はわかってしまうと思いますが、やってみると難しいと感じると思います。解説ではどうすれば簡単にできるかのコツとかを話しておりこれを聞けば割と簡単にできるようになります。

 

three

最後に元に戻らないワイルドコイン。前見せてもらったときは、面白かったのですが少し裏がごちゃっとした印象を受けましたが、今回の作品集に収録するにあたりすごくすっきりしていました。無理のある個所がなく手順としてとてもきれいに感じます。スタンドアップで出来ますし練習してみたい作品です。特に最後のチェンジは鮮やかで傑作です。

ここからは雑談なのですが最後のチェンジ、最初、本人はあまり気に入っていなかったみたいで2017年のマジックマーケットの時に聞いたら「僕はそんなに気に入っていないのでこっぺさんにあげますよーー」とか言っていました。そのあと、私がべた褒めしまくってさらにTAKAHIROさんにも、べた褒めされたのがあって、見事に取り返されました()。

よってあそこで私が聞かなかったらこの作品はなかったわけで、RALLさんは僕が育てたといって過言じゃないですね(過言です)。

 

stretch

頭おかしい。以上! で終わらせたい。いや裏側を見ると頭おかしいんですよ。しかも本人は安定してやりますからやっぱり頭おかしいのかもしれません。ここで使われている少し変わったプロダクションはそれだけでも使えるため、前半部分が頭おかしいと思う人はそこだけでも練習してみるといいのかもしれません。

 

ringbound

リングとコインのスペルバウンド。リングとコインのスペルバウンドはこの作品以外にもぱっと浮かぶ物で最近だとRiccardo Negroniの「Shapeshifter(https://youtu.be/N4QBVL4Wj2E)」やRyu-kaさんの「Ryukapi!( https://youtu.be/XxQty0Qi8wM)」に収録されている、「yu | bi | wa」が浮かびます。RALLさんのringboundはこれらの作品より前にJONALで発表されています。今回の作品集に収録されているものは、おそらくJONALと全く同じだと思います。一番の特徴は、指に指輪を付けている間だけ指輪で取ったらコインになるという現象で統一されているところです。変化の仕方も1つ1つ面白く、捨ての現象がありません。流れも美しく間違いなく傑作です。 

 

raise rall

手遊びから生まれたアンビシャスコイン。おそらく、私とRALLさんでtmtmさんの家に遊びに行ったときアンビシャスコインの話をしていたのがきっかけだと思うのですが、そこで最終的に出来たのは意味の分からないゲームでした。それがまさかあんなに不思議になるなんて。。。裏の動作も地味に賢く、コイン1枚でできるため、活躍の場は地味にありそうです。

 

え?艦これ?コインマンなら1度はこの音をシークレットムーブで鳴らすことができないかと考える人はいると思うのですが、なかなか無理だと思います。まさかあんな方法で解決できるとは思いませんでした。初めて見せてもらったとき、とてもきれいな音が鳴るため、ギミックを疑いましたがノーギミックです。今後この技法を使って面白い手順を作る人が出てくるのを結構期待しています。

 

 

今回、演技映像を全公開しています。正直私はこの方法は(種が知りたいわけじゃなくて、演技だけみたい層や、お金がない人は買った方が良いことがわかりつつも目コピしてしまうため)どうしても売り上げが落ちると思い謎の心配をしています。しかし、それでも大丈夫という自信の表れですね。

ここ最近で出たコインの作品集の中で、最もすごいものの1つです。コインマンなら買わないという選択肢はないでしょう。

Hydrangea Chitose Side by千歳


千歳さんはきれいで繊細なカードの扱いをするカーディシャンで、タッチ芸、良い意味でのちょろまかしムーブが特徴の、独特なカードマジックをします。私も彼のマジックにはかなり影響を受けていてあこがれているマジシャンの一人です。
実は地元が近い関係で、DVD発表前から何回かお会いして遊んでもらっています。なので、まあこのレビューが信用できるものかといわれると怪しい気もしますが、書きたいので書いていきます。


Oil and Water
ノンエキストラの水漏れ油漏れ。
ノンエキストラでこのプロットを考えるとどうしても2×2で混ぜるところが弱くなるように構成してしまいがちだが、カードを捨てるところで賢いムーブをし2×2の時にエキストラを作っています。最後のところも少しイロジカルなタッチ芸で解決しており見ていて気持ちのよい作品だと思います。

Collector
かなり変わっているコレクターズ
4枚のKの間にあれよあれよと選ばれた3枚のカードが挟まります。
賛否の分かれそうなマジックですか、私は大好きです。一つ一つの動作をじっくり見られると何も不思議にならないのですが、それらを同時にやることにより、脳の処理が追い付かず、キツネにつままれたような印象を受けます。これは千歳さんでないと作ることができない手品だと思います。頭の中どうなっているんやろか。ほんまに。

Grasshopper
グラスホッパーです。
傑作。実はこの手品、発表の2年前に直接教えてもらっているのですが、ついに発表されてしまいました。広まってしまうことを考えると少し残念。発売された直後、SNSの評価を見ると2段目があまりよろしくない(1段目、3段目に比べてということだと思いますが)という評価でした。確かにDVDの動画だとあまり生えてない気はします。ただこれは撮っている角度の問題かなあと思います。実際に見たとき、僕は2段目にもかなり衝撃を受けました。1段、2段、3段すべてがすごくて、間違いなく傑作です。

 

余談ですけど、グラスホッパーがプロットとしてとらえ始められたのっていつなんですかね。ぱっと調べた感じ、割と最近※な気がします。DVD『アリオス』がきっかけのような気もしますが、アリオスの少し後にMOさんも限定DVDでグラスホッパーを載せています。千歳さんのグラスホッパーも割と前からあるようですしひょっとしたら少し前に日本のアンダーグラウンドで流行っていたのかなあと妄想したりしています。

※前にも似たような現象は多々あるのですがグラスホッパーという名前で発表されているのはあまり見かけませんでした。

Quick Anti
直視されると少し厳しそう(そもそも現象が起こったミスディレクションでやる技法)ですがカウントを使わず、一発でアンチオイルアンドウォーター状態にできます。
Ascanio spread variation
アスカニオスプレッドのバリエーション。通常のアスカニオスプレッドと別の場所がダブルになります。そこをダブルにしたかった!と思うことが多い場所だと思うので割と使い道は多そうです。少しコツがいる場所があり、実はまだ安定してません練習しなくちゃ。。。

 

総評としては、まあ最新のカードマジックを学びたいのでしたらマストバイだと思います。特にグラスホッパーは傑作で、私もレパートリーに入れています。彼はまだまだすごいマジックを隠し持っているのでいつか発表してもらいたいですね。

ANIMAL TRAIL by Kohei Imada レビュー

ハイパーお久しぶりです。月1でレビュー書こうと思っていたらもう半年も空いてしまいました。怖い。
今回は先日のマジックマーケット2019で手に入れたKohei Imadaさんの『ANIMAL TRAIL』の感想を。
ほんわかさんに思いっきり先を越されたので書くのやめようかなあと思ったけど

〇Plam Off Plus
1枚のカードを選んでもらいKの間に挟むと消えてデックの中央から出てきます。その後観客が選んだカードと同じ数字のカードがKの間からコレクター状態で出現します。

 

手法は割とオーソドックスなのですが細かいところがImadaさんっぽくてすごくいい。特に選んだカードをKに挟んでから消すまでのところが気に入りました。
コレクター状態にするところは少し重たい感じこそあるものの、流れでできるため練習が楽しいです。

〇Lazy Interchange
パームを使わないインターチェンジ(ポケットを使うトランスポジションってインターチェンジっていうんですかね。無知故知らなかった)。

 

パームを使わない同系統のマジックだと新沼研さんのNo Palm Transpocketがぱっと浮かびました。(この系統服に依存する関係でスルーしがちで新沼研さんが最初に出てくるあたり、、、なんですけども)
この手のプロットでパームを使わないとどうしてもそれ相応のしわ寄せや嫌なムーブが出てくると思います。
当然この作品もしわ寄せ的なところがあるのですが、それが交換現象の緩急を生んでいて逆に良くなってます。
なかなかジャケットを着る機会がないためやる機会は少ないかもしれないですか、この手順ならやってみたいと思いました。

 

〇Back Off
古き良きバックオフ。バックオフの後にフルデックを使うカード当てをやります。他にもオールバックとの組み合わせの手順が解説されています。

 

「古き良き」と書いたのは、最近はバックオフとツイスト現象をつっくけることが多いと思ったので。(マジック仲間にもパックオフと聞いたらツイスト現象からはいると思っている人がいるくらいには流行っていますね。)
そんな中久しぶりに純粋なバックオフの現象を見た気がします。
ギャフカードを用いてこの手の現象の中ではかなりクリーンに演じられる方だと思います。特にパケットをくるくるした後に裏面を改めるところが好きです(伝われ!!!)。
後半のフルデックのカード当ては、少し無理があるような気もするのですが(ギャフのコンディション次第かな?)、現象も裏の動きも面白いです。

オールバックとの組み合わせは無難な感じですが手品手品していてかなりいい。この手順はオフ会とかで実際にやってみたいと思いました。

〇Chimera Aces
ジャズエーセズ、アルティメットエーセズ、オープントラベラー、オーヘンリーエーセズの要素を詰め込んだエースアセンブリ。4枚のAと4枚のダブルブランクカードを使ってエースアセンブリをします。

 

クッソいい。実演で見せてもらったのですが(他の人に見せている奴も含めれば4回くらい見ました)ブランクカードを見せるサドルティーがすごく効いてきてだまされました。
なんでこんなに錯覚が強いのかなあと思っていたんですけど、解説読んでちょっと納得しました。意図しているかわからないですけどオーラムサドルティーっぽいことやっているのにオーラムサドルティーでは見せられないところ見せてるのよね。憎い。。。

難易度もそこまで高くなく、4枚ギャフカード持ち運んでおけばいつでもできるのでこれもそのうちオフ会かどこかでやると思います。

このトリックの前身になるトリックも解説してあり、そちらはレギュラーデックでやることができます。ブランクを使う方が良いと思いますがこちらも無難でいい感じです。

あとジャズエーセズ、アルティメットエーセズ、オープントラベラー、オーヘンリーエーセズについてのクレジットをざっくりとまとめてある親切設計。
こういうプロットごとの生い立ちとか意外とまとめてあることって少ないので誰かまとめてマジックマーケットに出してくれないかなあ。。。とか思いました。

 

〇Gambler in The Dark

風変りなギャンブリングトリックです。演者が目隠ししてボトムディールデモンストレーションを始めますが、ちょっとしたアクシデントあります。


もう設定から面白い。トリック自体も最後にフルデックそろうのですが、複雑なことはしていません。
半ば演出勝ちなトリックなのに、細かいところも詰めてありやってみたいと思わせてくれるトリックでした。エンドクリーンなのも良き。

 


全体的に実際にやってみたいと思わせてくれるトリックでした。難易度も難しくなく練習が楽しい系なのもすごくいいです。1年でこんだけ新作作れるのもなのか。。。。
Kohei Imadaさんのマジックはすごい好きなのでこれからも期待してます。今年のマジックマーケットで1番良いカードマジック集だと思いました。

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完全に余談なんですけどマジケ当日、Kohei Imadaさんのマジックが好きすぎで自分のブースの宣伝はしないくせに、 Kohei Imadaさんのブースの宣伝ばっかりやってました。いやお前は自分の商品売れよ!!!!

DosingSilver by Tatta レビュー

TattaさんのDosingSilverを買ったので気に入った手順をいくつかピックアップして感想を書こうかなあと。技法もたくさん入っているんですけど今回は割愛()。

 

〇3 Coins Trick

技法編で解説された技法をふんだんに盛り込んだ3コインルーティン。

2枚目の消失と、出現パートの1枚出てから2枚目の出現までの流れが好き。なるほどそこからPinkie Passにつなげられるのか!と膝を打ちました。

 

〇4 Coins Opener

リバースマトリックスのラストのようないつの間にかっぽく四隅にコインが出現する、マトリックスの前に使えるオープナー。

今までにありそうでなかったタイミングなので引っ掛かります。そんなに難しくないのでやってみたい。

 

〇Silver and Copper

コインボックスに入れておいた3枚の銅貨と手元の3枚の銀貨の入れ替わり手順。

少しやりすぎ感もあるけど、1枚目から3枚目の変えていくところの手順がきれい。特に、1枚目変わった後から2枚目が変わるまでの流れが好き。というかこれ自分でやっていたら楽しい系だ。練習したい。コインボックスを開いたら入っていたコインが変わっているのも面白い。

 

〇Noise

見えないコインをグラスに当たると音が聞こえます。最後にはコインは見えるようになり逆にグラスが見えなくなります。

音を利用した手順。単に当たる音だけじゃなく、こする音など様々な音が鳴るのが良き。グラスが見えなくなるところは最初完全に引っ掛かりました。

 

〇Multi-Task

マニアックなマトリックス。コインマトリックスかと思ったらカードが移動していく。最後の1枚も移動すると思ったらコインが1か所に集まります。

相当マニアックな現象ながら無理なところはあまりなく、すごくきれいな手順になっています。カードが移動しているからこそ、最後のオチの部分の手法が効果的になっています。予想以上のことが起こりるため、最初コインのエキストラを使っているのかと思いました。普通にオフ会とかでもやってみたい。